雑記帳

文章を書くトレーニングのためにやってます。

医療者と患者の壁

4年生になると、OSCEのために医療面接の練習をします。
このとき、模擬患者さんとも練習するのですが、医療者との壁を感じました。

※OSCE・・・全ての医大で行われる共用試験。4年次と6年次に行われ、診察や基本的手技の実技試験である。

そもそも。
医療面接をするにあたり、テキストが配られそこには大きな流れ、聞くべき項目が掲載されています。

ざっくり書くと、
・オープニング(挨拶、患者確認など)
・どういったことで来られましたか?
・もう少し詳しく伺ってもよろしいですか?
・症状(程度、頻度、持続時間、発症時期、随伴症状、寛解増悪因子)
・システムレビュー(服用中の薬やサプリメント、睡眠、食欲、体重変化、月経、酒タバコ)
・既往歴、家族歴
・生活について(家や職場のこと、ストレス)
・要約
・ほかに言い残したことはありませんか?
・挨拶

このような感じ。
私達は試験に向けて、聞くべき内容と流れをとりあえず丸暗記します。
ただ、それだけでは駄目で、「共感的態度」「理解的態度」が求められるので、程よく相槌を打ったりそれはお辛いですね〜とか言ったりします。

で、これを学生同士で練習したあと、模擬患者さんとも面接練習をします。

模擬患者さんを目の前にすると、知らない人が目の前に座ってると言うだけでプレッシャーを感じ、緊張します。
聞くことが飛んだり、うまく相槌が打てなかったりするのは目に見えてますが、それ以上に。

私の当たった模擬患者さんは、
「話を聞いて理解して欲しい!」
「もっと開放型で患者さんにしゃべってもらって!」

・・・というのが、こっちが思ってる以上にあるようです。

なので、「胸が苦しくてギューっとします」と訴えられたとき、「どの辺が痛みますか?」と尋ねると、イラッとして「痛いんじゃなくて苦しいんですが」と言われたり(これは確かにイラつくと思う)。

これくらいなら、まあ分かるのですか、

・「最後に言い残したことはありませんか、と聞くのはある程度仲が深まってから聞かないと」
←?? 別の班の模擬患者さんはむしろ褒めてたらしい

・「もっと開放型で話させて。でも本当ならこんなに患者さん話さないから上手くやってよ」
←制限時間付きの試験なので、聞くべき項目を聞かないといけないのに・・・しかも話してくれない人に開放型でって無理じゃない?

・「なんで病院行ったか聞かないの?」
←テキストの項目にないから・・・でも普通なら聞きそう


┐('~`;)┌

学生として思うのは、
・そもそもテキスト通りにやっても患者さんは満足しない(テキスト作り直してよ!)
・試験に受かるための面接(程々に相槌打って共感し項目聞いてく)は患者さんに評価されない
・医療者は情報を引き出したいから質問してるのに、患者は話を聞いて欲しい理解して欲しいから答えてるという時点で埋められない溝がある
・コミュニケーションは主観的であるので、模擬患者さんによって受け止め方が違う。正直どうしていいのかわからない。


せっかくOSCEで医療面接やっても、患者さんに喜んでもらう医療にはつながっていません。
OSCEも所詮は臨床実習に上がるための仮免許なだけ。

永遠に埋まることの無い、医療者と患者の認識の違いみたいなものを感じてしまいました。
なんだかなあ。

医学部入試の地域枠はやめといた方がいいかもって話

こんにちは。医学科の4年生です。

 

地域枠について、少し思うことがあり書き残します。

はじめに言っておくと、この記事は地域枠を私自身も前期試験での合格です。

 

ただ、この入試制度のおかげで後悔をしている友達、先輩、後輩を私は見てきました。

これから地域枠での医学部受験を考えている人に、参考にしてほしい、よく考えてほしいと思い筆をとりました。

 

  • 地域枠とは?

昨今の日本の医療において、地域での医師不足が問題となっています。

この地域医療の崩壊を食い止めるべく、全国の医学部入試で設けられたのが「地域枠」です。

 

一般的に、この地域枠というのは、大学がある都道府県(またはその中でも医療が厳しい地域)出身の学生のみに受験資格が与えられています。

この地域枠で入った学生は、「卒後〇年間、都道府県知事が指定する地域で医療に従事すること」などといった、地域医療へ貢献することを確約させられます。

つまり、入試を受ける人を限定し、卒後は勤務地を限定させることで、地域に医師を置いておこう、ということです。

 

次に、地域枠を入試という観点から考えていきます。

地域枠(つまり推薦・AO入試)ではセンター試験+面接or小論文、特殊な試験という内容で試験が行われます。

この試験と対照的に、前期試験や後期試験といった一般入試では、センター試験+二次試験(英数理などの筆記試験)に面接が加わるのがよくあるパターンです。

 

名前は伏せますが、私の所属する大学をはじめとする地方医大において、入試のレベル(ここではセンター試験の点数)は地域枠の方が一般試験より易しいケースが多いです。

 

したがって、地域枠について乱暴に要約すると、

ラクに入学させてやる代わりに、卒後は首輪付いてるからな。」

とも言えると思います。

 

※語弊のある部分や、大学により詳細は異なるかと思います。

 不快に思う方がいらっしゃったら、申し訳ありません。

 

 

  • なぜ地域枠で入ったことを後悔するのか

医学部受験を考えている方の中には、こう考える人もいるかもしれません。

「地域枠っていっても、奨学金付きのとこは返済したら首輪とれるでしょ」

「文面には、研修については指定あるけど細かいところまで記載ないし大丈夫」

医大は地元だし、〇年間従事するのは全然問題ない」

 

入学する前の、受験期にはなんだっていいから医学部に入りたいと思う気持ちと、医師のキャリアや制度についての無知からこのような考えをすることが多いかと思います。

 

以下、後悔している周囲のケースいくつか挙げます。

「結婚した旦那さんが都道府県外の人。研修で別居となり、合流したいが縛りが・・・」

AO入試での縛りが実質入局を意味していた。卒後は医大でなく市中病院で働きたいのに・・・」

「出身はこの都道府県だけど、地元はその中でも都会。入局したら地方に飛ばされる。」

都道府県の奨学金を借りたけど使わず貯金している。やっぱり全額返金して縛りを取ろうと思ったら、返されるために奨学金を貸しているわけではないと説明会で釘を刺された。」

 ・・・以下省略。

 

うちの大学は、確約書には初期研修は縛りがありますが、それ以外は文面上「地域医療に貢献すること」とだけしか書いていません。

しかし、この文面を拡大解釈して入局を強要しているのが現状です。

そして、この医局制度というのがやっかいです。

 

医者は口約束だけで入局し、医局から関連病院、そして地方にも派遣されます。

関連病院の人事を未だに医局が握っている大学も多くあります。 

こいつに所属すると、基本は医局からの指示で勤務先が決まっていくことになります。自分の希望が通るかどうかは、医局によるそうですが、私の大学の先輩方を見ていると3年目から地方に飛ぶ人が多くみられます。

 

この辺の事情が、入学前に豊かに想像できる受験生が何人いるのでしょうか。

拡大解釈可能な文言で契約書にサインをさせ、5,6年生になったころに、「入局するのが当たり前。外には出させない。」と囲い込むのはいささか乱暴だなと思ってしまいます。

 

もちろん、低いセンター試験の点数で入れてもらっているのだから、そういう内容で約束したのだから、その契約内容を遵守すべきだと思います。縛りなく研修先を選びたいなら、もう一度一般入試で入り直すしかありません。

また、私は前期試験で通っていますので、育った地域がそこだからという理由だけで大学受験をヌルゲーにしてもらえるのはうらやましいです。

 

ただ、短い文章の紙ぺら一枚で、将来の想像もできない受験生を、「楽に入れるよ」という甘言で誘い、入ったらAOで入れてあげたんだから入局しなよ・・・というのは、初めて一人暮らしをした無知な大学生にクレカを作らせて、リボ払いで破産させるのと似たような構造を感じます。

そのうえ、一般試験では入れてないという負い目につけこんで入局という拡大解釈を強要してるのが気持ち悪い。

 

「しっかり調べて将来を考えることをしない人が悪い。」

 

と、厳しく切り捨てるのは簡単です。

しかし、大学入試のあの圧力を知っているヒトならわかると思いますが、医学部入試は厳しい世界です。

浪人生や、私立医大の受験が経済的に厳しい人で、成績が思わしくないと、「どこでもいいから、受からせてほしい。数年くらい働くから・・・!」という思考になります。

そんな受験生が、全く知らない医師のキャリアや卒後のやりたいことまで、考えきれるのか疑問です。

 

考えたとして、医大での6年を経る前と後でブレずに貫けるのか・・・

人間は追い込まれた状況ではそう思っても、恵まれた環境に出ると欲が出るものです。

 

 

  • 裏切り者の行く末、病院の対応

 

www.nikkei.com


 

この地域枠制度、やはり後悔する人は全国的に一定数いるようで、そのなかでも「義務年限違反」をする人が出ています。

これ以上違反者を出さないようにするため、厚労省は義務違反した地域枠の学生を採用した臨床研修先の病院にペナルティを科すことを決定しました。

当たり前ですが、国としては地域医療を立て直したいがために、地域枠を設け、医学部の2割を占めるまでに拡大したわけです。 

 

ただ、今までは、そのまま逃げてきた学生を採用していた病院もありました。

しかし、これからは補助金減額などの制裁を国から加えられるため、病院側も慎重になると考えられます。

 

今までは病院と大学間だけでの制裁だったようですが、それだけでは収まらないようです。

実際、うちの大学からたすき掛けを利用し外病院での研修をしたまま、ほかの大学の医局に流入した学生が去年いたそうですが、今年からその病院でのたすきがけ研修はできなくなりました。(話し合いの末、うちの大学の意向で選択肢を潰されたのです。)

裏切り者は、後輩の将来を犠牲にして自分の利益のみをとるので擁護しがたいですが、裏を返せば、それだけ地域枠にデメリットが大きいと感じる人が多いのです。

 

このような状況から、義務違反して首輪を外すことは年々厳しくなっていきます。

受験時に交わした悪魔の契約は重くのしかかり、地域枠の学生はもれなく、まっとうに背負うことになるでしょう。

 

 

 

最後に、

地域枠は豪華客船か、沈みゆく船か、私にはわかりません。

 

しかし、将来やりたいことができたとき、足枷を自ら作らないようにするために、私は一般での入学をおすすめします。

 

これから医学部地域枠を考えてる人は、よく考えて、後悔ないか覚悟をきめて受けるてください。